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朗読箇所

四旬節第1主日

旧約 イザヤ書 25:6−10


6 万軍の主はこの山で祝宴を開き
すべての民に良い肉と古い酒を供される。それは脂肪に富む良い肉とえり抜きの酒。
7 主はこの山で
すべての民の顔を包んでいた布と
すべての国を覆っていた布を滅ぼし
8 死を永久に滅ぼしてくださる。主なる神は、すべての顔から涙をぬぐい
御自分の民の恥を
地上からぬぐい去ってくださる。これは主が語られたことである。
9 その日には、人は言う。見よ、この方こそわたしたちの神。わたしたちは待ち望んでいた。この方がわたしたちを救ってくださる。この方こそわたしたちが待ち望んでいた主。その救いを祝って喜び躍ろう。
10 主の御手はこの山の上にとどまる。


新約 ヨハネによる福音書 2:1−12

◆カナでの婚礼
1 三日目に、ガリラヤのカナで婚礼があって、イエスの母がそこにいた。
2 イエスも、その弟子たちも婚礼に招かれた。
3 ぶどう酒が足りなくなったので、母がイエスに、「ぶどう酒がなくなりました」と言った。
4 イエスは母に言われた。「婦人よ、わたしとどんなかかわりがあるのです。わたしの時はまだ来ていません。」
5 しかし、母は召し使いたちに、「この人が何か言いつけたら、そのとおりにしてください」と言った。
6 そこには、ユダヤ人が清めに用いる石の水がめが六つ置いてあった。いずれも二ないし三メトレテス入りのものである。
7 イエスが、「水がめに水をいっぱい入れなさい」と言われると、召し使いたちは、かめの縁まで水を満たした。
8 イエスは、「さあ、それをくんで宴会の世話役のところへ持って行きなさい」と言われた。召し使いたちは運んで行った。
9 世話役はぶどう酒に変わった水の味見をした。このぶどう酒がどこから来たのか、水をくんだ召し使いたちは知っていたが、世話役は知らなかったので、花婿を呼んで、
10 言った。「だれでも初めに良いぶどう酒を出し、酔いがまわったころに劣ったものを出すものですが、あなたは良いぶどう酒を今まで取って置かれました。」
11 イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行って、その栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた。
12 この後、イエスは母、兄弟、弟子たちとカファルナウムに下って行き、そこに幾日か滞在された。

説教

水がぶどう酒に変わるための条件

  • 説教者  稲葉基嗣牧師

     

    新約聖書で描かれている時代、
    結婚のお祝いは7日間にわたって行われました。
    村中の人たちや、近くの町や村に住む親戚たちがやって来て、
    結婚した一組のカップルにお祝いの言葉を伝えます。
    きょう読んだヨハネ福音書の物語には、
    カナという村で行われた結婚のお祝いの
    舞台裏で起こった出来事が記録されています。
    カナは、ナザレの村から
    15kmほどの距離にあった村でしたので、
    イエスさまやイエスさまの母マリアが
    この結婚のお祝いに呼ばれていたことは、
    とても自然なことでした。
    マリアは食事の準備や給仕をするなど、
    このお祝いの手伝いもしていたのでしょう。
    彼女は、このお祝いで起きた
    トラブルにいち早く気づきます。
    それは、ぶどう酒がなくなってしまったことです。
    水が不足することのある地域ですから、
    この地域の人びとにとって、
    ぶどう酒は贅沢品というよりは、必需品でした。
    あって当然のものが、お祝いの席からなくなってしまう。
    それは、この婚宴の主役である、
    結婚をするふたりにとって、
    とても恥ずかしいことでした。
    それどころか、このようなことが起こったら、
    この先何年も、村中の人びとの笑いの種になってしまいます。
    喜ばしいお祝いの席が、一瞬で恥にまみれ、
    この先ずっとこの1組のカップルや彼らの家族の名誉が
    傷つけられる原因となる出来事となってしまいます。
    結婚のお祝いのために
    用意したぶどう酒がなくなることは、
    この当時の人びとにとって、
    そのような危険のある、とても深刻なトラブルでした。

    このようなトラブルが起こったことを知ったとき、
    イエスさまの母マリアは、イエスさまのもとに来て、
    「ぶどう酒がありません」と、
    トラブルが起こったことをイエスさまに伝えます。
    そんなマリアに対する、イエスさまの反応は、
    なんて反抗的な響きを持っていることでしょうか。
    「女よ、私とどんな関わりがあるのです」(ヨハネ2:4)と、
    イエスさまは言いました。
    なぜ自分を頼ってきた母親のことを
    突き放すかのような言い方をしたのでしょうか。

    イエスさまが女性に対して、
    「女性の方」と呼びかけるシーンは、
    ヨハネ福音書にも、他の福音書にも登場するので、
    この呼びかけ自体は、イエスさまにとって
    割と自然なことだったようです。
    ただ、実の母親に「女性の方」と呼びかけるのは、
    不自然ですし、二人の間に距離があるように思えます。
    家族との距離を取るような言い方を
    イエスさまが選んだことは、
    イエスさまがマリアに
    「私とどんな関わりがあるのです」と
    言ったことと関係がありそうです。

    そう、実はマリアがお願いしていることは、
    イエスさまの家族に大きな影響を与える内容でした。
    というのも、ぶどう酒がなくなってしまったとき、
    何よりも期待されるのは、
    そのぶどう酒を買ってきて、用意してくれる存在です。
    それはまさに、ぶどう酒を切らして、
    喜びが一転して、恥をさらすものになってしまう、
    そんな危険を抱えた一組のカップルを助ける存在です。
    いや、それはこのカップルだけでなく、
    彼らのそれぞれの家族の名誉も守るものでした。
    そんな危険に晒されている彼らのことを
    助ける人が現れたならば、
    その人やその人の家族は、
    まさに称賛され、栄誉を受けます。
    この家族を助けたことにより、
    家族同士の良い関係を
    築くことができるかもしれません。
    マリアが長男であるイエスさまに期待したのは、
    まさにそういうことです。
    家を出て行き、弟子を集めて活動し始めた
    自分の息子であるイエスさまが、
    カナでの結婚のお祝いでトラブルを
    抱えているこの家族のために、
    自ら名乗り出て、ぶどう酒を提供するならば、
    それはまさに自分の息子の名誉となり、
    カナの人びとの間でイエスさまが尊敬を集め、
    イエスさまの社会的地位が高められることになります。
    彼らを助けることにより、
    自分たち家族と彼らの関係が
    強くなることが期待できます。
    自分たち家族が困ったときは、
    彼らに助けを求めることだってできるかもしれません。
    マリアがそういったことを
    どこまで考慮していたかはわかりませんが、
    彼女がイエスさまに促している行動は、
    結果的に、そのような影響を及ぼします。

    誰かがトラブルに巻き込まれている中で、
    そのトラブルの解消を助けることが、
    家族同士のつながりを強めたり、
    自分の株を上げ、社会的地位を良いものにする。
    自分がそのような利益を受けることを狙って、
    このトラブルを解決したいとは、
    イエスさまは思わなかったのでしょう。
    それは、イエスさまの目的とは、
    まったく違っていたからです。
    自分が尊敬を集め、
    社会的な地位が向上することではなく、
    自分を通して人びとが神と出会うことを
    イエスさまは願っていました。
    だから、イエスさまは、
    この問題と距離を取ったのでしょう。
    わたしとは関係のないことです、と言って。

    そんなイエスさまの言葉を聞いたマリアでしたが、
    彼女は、自分の息子ならば何とかしてくれるから、
    息子の指示に従ってくれと、
    結婚のお祝いのために働いている
    召し使いたちに伝えます。
    30年近く一緒に過ごした自分の息子ですから、
    マリアは、自分はイエスさまのことを
    よく知っていると思っていたのでしょう。
    あのように言うけれど、最終的には、
    このトラブル解決のために
    彼は動いてくれるに違いない。
    そんな期待を込めて、
    「トラブル解決のために、
    息子が動き出したならば、
    彼を助けてやってくれ」と伝えたのでした。

    さて、このトラブル解決のために、
    ある意味で、マリアの願い通りに、
    イエスさまは動き出します。
    でも、ぶどう酒を買うためのお金を
    提供したわけではありません。
    マリアやその場にいた召し使いたちの予想とは、
    まったく違うことをイエスさまは言い始めました。
    イエスさまの指示したことは、
    水がめいっぱいに水を入れること。
    そして、その水がめから水を汲んで、
    この結婚のお祝いの世話役のところに、
    その水を持っていくことでした。
    何とその水は、質の良いぶどう酒に変わっていました。
    いつ、どのようにして水がぶどう酒に変わったのか。
    わたしたちはそういったことが気になってしまいますが、
    どうやらそれは、この福音書の著者の関心ではありませんでした。
    イエスさまの評判が良くなるためでもなく、
    イエスさまの家族が良い利益を受けるためでもなく、
    トラブルを被った人びとが
    危険な状況から救い出されるため。
    ただ、そのために、イエスさまは動きました。

    でも、不思議なことに、
    実際に動いたのはイエスさまではありません。
    この結婚のお祝いでのトラブルの解決に、
    直接的に関わったのは、
    「ぶどう酒がありません」と
    イエスさまに伝えたマリアであり、
    イエスさまの指示を聞いて、
    その通りに動いた、召し使いたちでした。
    イエスさまが水をぶどう酒に変えた
    という奇跡が目立つ物語ですが、
    本当は、このトラブルをイエスさまに伝えたマリアや
    実際にこのトラブルに関わる召し使いたちがいなかったならば、
    水がぶどう酒に変わるチャンスはありませんでした。
    ぶどう酒に変わった水が
    お祝いの席に届けられることもありませんでした。
    水がぶどう酒に変わるための条件は、
    イエスさまに訴え、イエスさまの言葉を聞く人の存在
    と言えるかもしれません。

    このことは、わたしたちに、
    信仰的な現実を示しているかのようです。
    この世界のすべてのものを造った神は、
    水をぶどう酒に変えることの出来る方です。
    けれども、神は直接、
    そのようなことをしようとは願っていません。
    神はいつでも、ご自分を信頼して、
    祈り求める人が現れるのを待っています。
    マリアがイエスさまの前に、
    「ぶどう酒がありません」と伝えたように、
    動機に誤りがあったとしても、
    わたしたちと神の願いが異なっていたとしても、
    それでも、欠乏し、必要を感じ、
    神の助けと導きを求めて、
    わたしたちが近づいてくるのを神は待っています。
    そして、神の言葉に耳を傾け、
    行動を起こす人が現れるのを神は待っています。

    きょう、わたしたちはどこに、どのような場所に、
    水がぶどう酒へと変わる、そのような出来事が
    起こって欲しいと願っているのでしょうか。
    どこに神が訪れ、神に関わっていただきたいと
    願っているのでしょうか。
    神は喜んで待っています。
    わたしたちがぶどう酒の不足を訴えるのを。
    わたしたちがこの世界に、
    平和や正義が欠けていることを訴えるのを。
    わたしたちがこの社会に、
    愛や憐れみが欠けていることを訴えるのを。
    わたしたちの日常の中に、誰かを赦し、
    赦されることが欠けていることを
    わたしたちが訴えるのを神は待っています。
    そして、神はわたしたちに語り続けておられます。
    暴力が当たり前に広がり、
    人間の残虐さがますます
    膨れ上がっているように見えるこの世界で、
    平和を作りなさい、と。
    報復が止まらないこの世界で、
    和解と赦しの道を模索し続けなさい、と。
    武力に頼り、心から目の前にいる人を信頼しない世界で、
    他人を傷つけるあらゆる道具を捨てて、
    敵を愛しなさい、と。

    それは、愚かなことに見えるかもしれません。
    けれども、神はこのような方法を選ばれました。
    神に訴え、祈り、神の言葉に耳を傾けて、生きる。
    そのような人びとを通して、みなさんを通して、
    わたしたちの日常で、そしてこの世界で、
    神はきょうも、水をぶどう酒へと変えようとしています。

週報より

  • 2024.02.18 週報より抜粋・要約

  • ① きょうは礼拝後に、ランチの会を予定しています。
    メニューはセルフサービス・サンドです。
    ランチの会は無料ですので、ぜひご出席ください。
    ランチの会への自由献金は歓迎します。

    ② ランチの会のあとに年次教会総会を開催します。
    教会員の皆さまはご出席ください。
    やむを得ず欠席をされる方は、
    委任状のご提出をお願いします。
    委任状の書式はとくにありません。
    委任状は、LINEでのメッセージや
    メールでも提出可能です。

    ③ 来年度の礼拝の係やチームにご協力いただける方を募集しています。
    週報にはさんである申し込み用紙をご覧ください。
    係を担当してくださる方は記入して、
    投書箱に入れてください。
    (もちろん、モレノ用の
    好きな讃美歌の投書も募集中です!)

    ④ 青柳和成さんの記念式を2月23日(金)、午前10時よりおこないます。
    青柳和成さんが天に召されてから
    1年が経とうとしています。
    今週の金曜日に、ご家族の方々と
    いっしょに記念の祈りの時を持つ予定です。

    ⑤ 来週から、いのちのことば社の「ぶんでんリレー」という企画がはじまります。
    小山教会でキリスト教関連のグッズや
    書籍を購入できます。
    今回は第1回目で、
    期間は3月24日(日)までです。

    ・能登半島地震の救援募金にご協力ください(受付テーブルの上にある家の箱)。
    ・書き損じ・出し忘れのはがきをください
    (アジア学院に寄付)
    ・洗礼(バプテスマ)・転会をご希望の方は
    牧師にお知らせください。

    小山駅・教会間の送迎(9:45東口出発)があります。
    詳しくは牧師にお尋ねください。


  • 以上

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